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千葉地方裁判所 昭和45年(行ウ)1号 判決 1973年5月30日

千葉市原町七七〇番地の三

原告

松井喜一郎

右訴訟代理人弁護士

三橋三郎

同市新宿町二丁目二〇八番地

被告

千葉税務署長

荒木政之丞

右指定代理人

山内喜明

筧康生

高見忠義

佐藤秀雄

磯喜義

田島久照

岡崎栄

高木惣太郎

右当事者間の昭和四五年(行ウ)第一号所得税更正処分等取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一、原告

1  被告が原告の昭和四二年分所得税につき、昭和四四年九月一六日付でした再更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決。

二、被告

主文第一、二項同旨の判決。

第二当事者の主張

一、原告の主張

(請求の原因)

1 原告は昭和一四年に亡父の遺産である山林を相続して以来現在まで継続して山林業を営んでいるものであるが、昭和四二年二月、右山林業の用に供していた原告所有の別紙第一物件目録記載の各土地(以下本件譲渡資産ともいう。)を訴外昭和開発株式会社に対し代金一〇、三四六、九四一円で売渡し、一方同年三月訴外石井弥惣次から同第二物件目録記載の土地(以下本件買換資産ともいう。)を同山林業の用に供するための代金三、二〇〇、〇〇〇円で買受けた。なお、原告は、右第二物件目録記載の土地を取得するに当つて、仲介手数料三〇〇、〇〇〇円、登記料金三七、一五〇円合計金三三七、一五〇円の取得経費を要した。

右山林の買換えは、事業用資産の買換えの場合に当り租税特別措置法(昭和四二年当時のもの、以下単に措置法という。)第三八条の六第一項の規定の適用があるから、原告は昭和四二年分所得税の確定申告に当り、右法条を適用し譲渡所得金額を三、二八四、六七三円、所得税額を六八一、六〇〇円と算出し、被告に対し右申告をした。

2 ところが被告は、昭和四三年一一月一六日、前記山林の買換えを事業用資産の買換えに該当しないとし前記法条の適用を否認し、譲渡所得金額を五、〇一四、〇四五円、所得税額を一、四〇一、〇〇円と更正するとともに過少申告加算税三五、九〇〇円の賦課決定をし、次いで同四四年九月一六日、所得税法第九七条、第九八条に基づき、原告の妻訴外松井かうの昭和四二年分所得金額二〇九、五六一円を主たる所得者である原告の所得とみなして原告の昭和四二年分所得金額を五、二二三、六〇六円、同所得税額を一、四三五、六〇〇円と再更正し、過少申告加算税一、七〇〇円の賦課決定をした(以下、両処分を合わせて本件課税処分という。)原告は、前記更正処分に対し昭和四三年一二月一六日異議申立をなしたところ、国税通則法第八〇条第一号により右申立が東京国税局長に対する審査請求とみなされて同四四年一〇月一五日右請求棄却の裁決がなされ、右裁決書謄本は同月二〇日原告に送達された。

3 しかしながら、本件課税処分は措置法第三八条の六の適用を誤つたものであつて違法であるから、その取消を求める。

(被告の主張に対する原告の反論)

被告の主張はすべて争う。原告は前述の如く昭和一四年以来山林業を営んでおり、同四二年当時の山林業の経営面積は、別紙第一目録記載の各土地を含め四二反(五二、五八二・一六平方米)であつた。そして昭和三六年以来同四三年までの山林収入は、三六年九八、〇〇〇円、三七年二〇四、五六〇円、三八年九一、七八〇円、三九年二七八、六五〇円、四〇年一四九、九五〇円、四一四一年四二一、五四〇円、四二年三六、〇〇〇円、四三年四三一、〇五一円であり、植林費、管理費、国定資産税等の必要経費を控捌してもなお余剰があつたのであるが、その間確定申告しなかつたのは、収入が申告するほどの額に達しなかつたがためである。また譲渡当時、右第一目録記載の各土地上に立木がなかつたのは昭和三七年から同四〇年にかけてその地上立木を伐採販売したからにほかならない。なお原告が買受けた同第二目録記載上の土地には取得後原告において植林しこれを育成管理している。

以上の次第であるから、被告の主張は理由がない。

二、被告の主張

(答弁)

1 請求原因1の事実のうち、原告主張の如く別紙第一目録記載の各土地を売渡し、同第二目録記載の土地を買受けたこと、原告が右第二目録記載の土地を取得するに当り原告主張の取得経費を要したこと、原告が昭和四二年分所得税につき措置法第三八条の六を適用して所得金額を算出し確定申告したこと、その申告額が原告主張のとおりであることは認めるが、その余の事実および主張は争う。

2 同2の事実は全部認める。

なお、被告は、原告の譲渡所得金額五、〇一四、〇四五円を次の算式により算出したものである。

(総総収入渡額)(必要金費)(特別控捌額)(譲渡所得金額)

<省略>

右総収入金額は別紙第一目録記載の各土地を売却して得た収入である、必要経費は原告の申告額によつたものである。

3 同3の主張は争う。

(被告の主張)

本件課税処分は、以下に述べるとおり原告主張の如き 瑕疵はなく適法有効である。

1 原告は昭和三四年ころから約一〇年間糖尿病のため病臥し、本件係争年度に至るまで所得税の申告がなかつたものであつて、原告の申告に係る本件譲渡資産は、登記簿上の地目は山林であるが譲渡当時立木はなく、かつ原告がこれを事業の用に供するため伐採を目的として植林、育成および管理を継続して行なつていた事実も認められない。また本件買換資産についても、登記簿上の地目は山林であるが、実際は雑木林の土地で、原告は単にこれを取得して保有していたに過ぎず、事業の用に供していたものではない。

2 原告は、原告がその所有する立木の一部をこれまでに伐採、販売したことがあるとして、従来から山林業を営んでいるかの如く主張されるが、原告が主張する立木の伐採、販売は、原告が昭和一四年に父の遺産である山林素地を相続により得取し、爾後、これを利用あるいは処分(譲渡、送電線の架設、道路の拡幅、戦時下の強制伐採等)する都合上、そこにあつた立木を伐採し、販売したというに過ぎず、もとより営利を目的として計画的、規則的、継続的に立木の伐採を行なつていたものではない。したがつて、このような事情のもとで行なわれた立木の伐採、販売をもつて原告が山林業者であるとはいえず、本件譲渡資産および本件買換資産についても、ともに事業用資産とみることはできない。

3 原告はこれに関連して、原告が森林組合の組合員であり、かつ、造林補助金を受領していることをもつて、山林業者であるかのように主張するけれども、右組合員たる資格は、山林所有者(山武町森林組合の場合二〇アール以上)であれば足り、この資格を有する限り、誰でも自由に森林組合に加入することができるものであるし、(森林法八六条)、また、造林補助金についても、山林所有者が相当面積(一反歩以上)に相当数(一ヘクタール当り三、〇〇〇本以上)の苗木を植林し、この旨申請すれば誰でも受領できる建前になつており(但し、山林所有面積五〇〇ヘクタール以上の者を除く。)、これをもつて山林業者であるとする根拠はない。

4 仮に、万一原告主張のとおり原告が山林業者であり、本件譲渡資産および本件買換資産がともに事業用資産であるとしても、本件課税処分は次の理由により適法である。

すなわち、措置法第三八条の六第一項には「個人が………その有する資産で次に掲げるもののうち事業の用に供しているもの(以下「譲渡資産」という。)の譲渡をした場合において………かつ、当該取得の日から一年以内に、当該取得した資産(以下「買換資産」という。)を所得税法の施行地にある当該個人の事業の用に供したとき、または、供する見込みであるとき………」とあり、買換資産は、これを取得した日から一年以内に山林事業の用に供さなければならないのであるが、この場合、山林事業の用に供するとは、具体的にはそこに植林、造林をなすことであるから、買換資産を取得した日から一年以内に植林もせず単に保有しているような場合には、事業用資産の買換えの特例の適用は認められないのである。

これを本件についてみると、原告が本件買換資産を取得した日は昭和四二年三月一三日であるから、その取得の日から一年以内である昭和四三年三月一二日までの事業の用に供するために植林しなければならないところ、原告が本件買換資産上に植林した日は昭和四四年四月一〇日(甲第四号証の一)であり、本件買換資産を取得した日から二年余りを経過しているのである。

5 以上の次第でば原告主張の山林の買換えは措置法第三八条の六第一項所定の要件に該当せず、本件課税処分には何ら違法はない。

以上のほか別紙準備書面記載のとおりである。

第三証拠関係

一、原告

1  甲第一、第二号証、第三号証の一ないし一〇、第四号証の一、二、第五証の一ないし三、第六号証の一、二、第七号証の一ないし二を提出。

2  証人松井留五郎、同高木喜助、同尾出久一、同清宮庄二の各証言を援用。

3  乙号各証の成立を認める。

二、被告

1  乙第一、第二号証の各一、二、第三、第四号証、第五号証の一ないし三、第六号証の一、二、第七号証を提出。

2  証人松井留五郎の証言を援用。

3  甲号各証の成立を認める(甲第七号証の一ないし三については原本の存在も認める。)

理由

一、原告が昭和四二年二月訴外昭和開発株式会社に対し、原告所有の別紙第一物件目録記載の各土地を代金一〇、三四六、九四一円で売渡し、同年三月訴外石井弥惣次から同第二物件目録記載の土地を代金三、二〇〇、〇〇〇円で買受けたことは当事者間に争いがない。

二、そこで、まず本件譲渡資産が措置法第三八条の六第一項にいう「事業の用に供している」資産(土地)すなわち事業用資産に該当するかどうかについて判断する。

おもうに、山林所得者に係る事業用資産とは、同法条の立法趣旨に鑑みると、山林所得者が山林の伐採又は譲渡を営利を目的として反覆継続的に行い社会通念上山林業と称するに足りるものの用に供している山林素地その他の固定資産であつて、それが山林素地である場合はこれに対し植林や造林等の経営管理が継続的になされているものをいうものと解するのが相当である。

いまこれを本件についてみるに、成立に争いのない甲第五、第七号証の各一ないし三、乙第三、第四号証、第五号証の一ないし三、第六号証の一、二、第七号証、証人松井留五郎(一部)、同高木喜助、同尾出久一、同清宮庄二(一部)の各証言ならびに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。すなわち、別紙第一目録記載の各土地上には譲渡当時立木は存せず、右譲渡は山林素地の売買であつたこと、同目録1ないし6の土地上にあつた立木は戦時中すべて伐採され、その後右土地上に若干植林がなされたが、原告が糖尿病に罹患するなどの事情があつて手不足となり、一部を除いては植林はおろか育林等の管理も殆んどなされていなかつたこと、ことに昭和三八年ころ、原告との契約に基づき、訴外東京電力株式会社が右土地のうち2、5の土地上に送電線(高圧線)を架設する際その障害となる立木が伐採されてからは、右土地の周縁に立木を残すだけとなり、他は荒れるに任せていたこと、同目録7の土地上にあつた立木は、その日時は明らかでないが疎開者に対し分筆前の一七四七番の土地の一部を分筆分譲する際右土地に私道を開設する必要から伐採されたままとなつており、植林されていないこと、同目録8の土地上の立木は、病虫害にあつたものを間伐し、これを売却あるいは自家用に消費していたが、残るものは本件譲渡に際して予め伐採したこと、原告の昭和三六年から同四一年までの山林所得は、確定申告を要する額に達せず、したがつてまたその申告もなされていないこと、原告のこの間の山林所得は、殆んどが病虫害にかかつた林木を間伐し、これを売却して得たものであり、その量および金額も少かつたこと、そして、時に、前記の如く送電線の架設や道路の開設あるいは山林素地を譲渡する必要から林木を伐採販売することがあつたに過ぎないこと、輪伐をするには最低約一〇町歩(七九、一七三平方米)の山林を必要とするが、原告は昭和一四年に家督相続してから、本件譲渡当時まで五町七反(四九、五八六・六五平方米)前後の山林を保有していたに過ぎず、輪伐は不可能であつたこと、を認めることができ、右認定に反する証人松井留五郎、同清宮庄二の各証言は前掲諸証拠ならびに右認定の事実に対比したやすく措信することができず、ほかに右認定を覆すに足りる証拠はなく、以上の事実によれば、原告が行つていた山林の伐採販売は、その契機や規模からみて未だ営利を目的として反覆継続的に行なつたものと認めるのは困難であり、社会通念上山林業を営んでいたものということはできないのみならず、本件譲渡資産の本件譲渡当時におけるまでの利用および管理の状況に鑑みると、本件譲渡資産は「事業の用に供している」資産(土地)には該当しないものと認めるのを相当とする。

成立に争いのない甲第一、第二号証、第三号証の一ないし一〇、証人松井留五郎の証言によると、原告は森林組合の組合員であること、県から造林補助金を支給されていること、森林火災国営保険にも加入していることがそれぞれ認められるが、森林法、森林国営保険法、千葉県補助金等交付規則などの関係諸法に照らすと、右組合員資格および保険加入は山林(森林)所有者であれば足り(組合員資格について定款による面積制限があるだけ)、又造林補助金も山林所有者が相当面積に相当数の植林をしたことを要件として支給されるものであつて、右事実は原告が山林業を営んでいることの証左となるものではないから右認定の妨げとならないし、成立に争いのない甲第四号証の一、二ならびに証人松井留五郎の証言によつて認めることができる昭和四四年四月ころ原告がその所有山林に植林したとの事実も、その時期の点からしてそれだけでは右認定の妨げとならない。

三、そうすると、本件譲渡資産が事業用資産に該当することを前提とする原告の本訴請求は、該前提が失当である以上その余の点について判断するまでもなく理由がないことが明らかであるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺桂二 裁判官 佐々木寅男 裁判官鈴木禧八は退官のため署名捺印できない。裁判長裁判官 渡辺桂二)

第一物件目録

1 千葉県印旛郡四街道町大字山梨一七四五番一

一、山林     一、五七三平方米(一反五畝二六歩)

2 同所一七四五番二

一、山林     五二二平方米(五畝八歩)

3 同所一七四五番三

一、山林     三八三平方米(三畝二六歩)

4 同所一七四六番一

一、山林     一、五九六平方米(一反六畝三歩)

5 同所一七四六番二

一、山林     五〇九平方米(五畝四歩)

6 同所一七四六番三

一、山林     四九二平方米(四畝二九歩)

7 同所一七四七番一

一、山林     三二三平方米(三畝八歩)

8 同所一七六九番

一、山林     八一六平方米(八畝七歩)

第二物件目録

千葉県山武郡山武町麻生杉田字九ノ割七二番

一、山林     一五、九二七平方米(一町六反一八歩)

昭和四五年(行ウ)第一号

原告 松井喜一郎

被告 千葉税務署長

昭和四六年四月一九日

被告指定代理人 小川英長

日野照夫

佐藤秀雄

川合弘

大塚守男

千葉地方裁判所民事部 御中

準備書面(五)

一、所得税法(昭和四〇年三月三一日法律第三三号)第二七条第一項に「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得をいう。」と規定し、これを受けて同法施行令(政令第六三条第一項に「法第二七条第一項に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業とする。」とし、その第二号に「林業及び狩猟業」を規定しているから、所得税法上の事業に林業が含まれていることは法文上明らかである。

ところで、右所得税法施行令第六三条に規定する事業の分類は、行政管理庁統計基準局編さんの日本標準産業分類(乙第一号証ノ一、二)を基準としたものである。同産業分類の小分類によれば、育林業とは、「将来直接利用するために保有されている山林で、その山林に対し、林木の造林、保育、保護が主要作業である事業所」とある。

原告が主張する山林業者が、右育林業者を称していることは明らかなところであるが、右育林業者は、いわゆる輪伐業者といわれるものと同意義である。

すなわち、輪伐業者はある程度(どの程度であるかは、樹木の種類、樹木の質の良否、樹令、植裁地の適否、造林技術等により相違があり、必ずしも明確な基準はない)の山林所有面積を有し、そのうちの一部の山林を伐採、譲渡(立木のまま譲渡する場合もある)し、そのあとに山林用苗木を植林し、それを管理する。そして、この作業を毎年継続して行ない、二〇年ないし五〇年の周期で一巡させているものである。もつとも、最近では、パルプ材、抗木伐等の需要が多くなつたために、標準伐令期以前の譲渡が増加している。

二、ところで、本件係争年分当時の租税特別措置法(以下単に「措置法」という。)第三八条の六(事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の金額の計算)には「個人が……その有する資産で次に掲げるもののうち事業の用に供しているもの(以下「譲渡資産」という。)の譲渡をした場合において……かつ、当該取得の日から一年以内に、当該取得をした資産(以下「買換資産」という。)を所得税法の施行地にある当該個人の事業の用に供したとき、または、供する見込みであるとき……。」と規定し、事業用資産の買換えの場合の課税が適用される要件を定めている。

右条文上の事業(林業)の概念が、前記所得税法の事業(林業)の概念と同一であることは明らかであり、具体的には、前記育林業または輪伐業を示すものである。

しかして、右措置法第三八条の六の規定は、租税負担を軽減するための特例を定めたものであるから、同条に規定する法律要件は、その文言に即して厳格に解することを前提としている。

そのことは、事業用資産の買換えの場合の課税の特例関係の通達(昭和三八年直審(所)七九(六四)(六五)(乙第二号証ノ一、二)によつて、次のとおり取扱われていることからも明らかである。

すなわち、右通達では、山林所得者の事業財産の買換えについて、「山林所得者に係る措置法第三八条の六の規定の適用については、その者が山林業と称するに足るものの用に供している山林素地および当該山林業に供するその他の固定資産で同条第一項各号に掲げるものを譲渡し、または、取得した場合に限られる」。とあり、また、買換資産を当該個人の事業の用に供したことの意義について、「植林されている山林を相当の面積にわたつて取得し、社会通念上林業と認められる程度に至る場合における当該土地は、当該個人の事業の用に供したものに該当するが、たとえば、雑木林を取得して保有するに過ぎず、林業と認められるに至らない場合の当該土地は、当該個人の事業の用に供したものに該当しない。」とあり、その適用要件の取扱いを明確にしているのである。

したがつて、山林素地の譲渡において、措置法第三八条の六の規定が適用されているのは、譲渡した山林素地および取得した山林素地がともに林業の用に供されていなければならないのであり、林業とは、具体的には育林業または輪伐業をいうのであるから、本件の場合のように林業の用に供していない土地を譲渡し、また、取得した土地も林業の用に供せず保有しているに過ぎない場合には、いずれも事業用資産とはいえず、事業用資産の買換えの特例が適用される要件に該当しないのである。

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